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住宅ローン控除 ~連帯債務の場合の注意点~

令和6年1月10日

税理士 柴田 幸男

Q.私と妻は住宅ローンを利用して住宅を購入しました。この住宅の購入金額や住宅ローンの金額等は次のとおりです。

  • 住宅の購入金額:4,500万円
  • 住宅の購入資金:頭金(夫負担)500万円、住宅ローン(連帯債務額)4,500万円(年末残高も同額)
  • 持分割合:夫2分の1、妻2分の1

この場合、私と妻の住宅ローン控除の対象額はいくらになりますか?

A1.検討

1)連帯債務の負担割合

 連帯債務とは、複数の債務者が、同一の債務について連帯して責任を負う債務である。また、債務者相互間の負担割合については、連帯債務者間で特約として定めることが出来る。しかし、この特約での定めがない場合には、各債務者の受けた利益によって負担割合を定めたと解することになる。

 不動産の共同購入に係る債務の場合、この各債務者の受けた利益は、不動産の共有持分割合相当であると考えられる。

2)上記ケースの場合の住宅ローンの年末残高

 住宅ローン控除を共有者との連帯債務で適用する場合には「(付表)連帯債務がある場合の住宅借入金等の年末残高の計算明細書」を使用して、住宅ローン控除の対象となる借入金の年末残高を計算することになる。

 この計算明細書は、まず不動産の共有持分から各債務者のその不動産の取得対価の額を計算し、つぎに債務者ごとのその取得対価の額をベースに住宅ローン控除の対象となる住宅借入金(連帯債務)の金額を計算する形式になっている。

 住宅ローン控除は、住宅の取得対価の額とローンの年末残高とを比較して控除額を算定するため、この計算明細書の計算となるのである。


 上記のケースの場合、具体的な住宅ローン控除の対象額は次のとおりである。


 ①夫の連帯債務に係る住宅ローン控除の対象額

   4,500万円 × 持分割合 1/2   = 2,250万円

   2,250万円 ― 自己資金500万円 = 1,750万円

  ②妻の連帯債務に係る住宅ローン控除の対象額

   4,500万円 × 持分割合 1/2   = 2,250万円

A2.対応

1)連帯債務の負担割合の特約を定めた場合

 この負担割合の特約を定めることにより、ローン残高のうち一部の金額が住宅ローン控除の適用不可になることもあるため、注意が必要である。

2)具体的な夫と妻の住宅ローンの年末残高及び贈与額

 上記ケースにおいて、連帯債務の負担割合の特約を、夫が60%、妻が40%と定めた場合の具体的な計算例は次のとおりである。

夫の負担割合60%とした場合、2,400万円(4,000万円×60%)であり、妻の負担する連帯債務の金額は1,600万円(4,000万円×40%)となる。

 結果、夫の住宅ローン控除は650万円(2,400万円-1,750万円)が控除の対象外となってしまう。

 又、妻については1,600万円が住宅ローン控除の対象となるが、妻の取得対価の割との差額650万円が夫より贈与を受けたと考えることになる。

3)連帯債務の負担割合の特約を定めた場合の対応(注意点)

 上記のとおり連帯債務者相互間の特約により、夫は住宅ローン控除適用外の金額生ずるだけでなく、贈与関係も生まれてしまう。

 連帯債務の場合には、不動産の持分を前提に、頭金を含めた購入資金の負担額を考慮して負担割合を考えるべきである。

〇詳しくは、柴田税務会計事務所 柴田迄お尋ねください。