2015年からの介護事業

2015年は、介護保険制度において、3年毎の報酬改定と5年毎の制度改正が同時に行われる予定の年です。
予想される波乱の時代をどう迎え、立ち向かうのか、ここらで心構えをしておくことが肝要と思われます。

介護分野の課題

平成25年1月21日付けの社会保障審議会介護保険部会(第42回)の資料「介護分野の課題」によれば、つぎのような課題が掲げられています。
Ⅰ 地域包括ケアシステムの構築
(1)介護サービス提供体制の充実
(2)認知症対応の推進
(3)マンパワーの増強
Ⅱ 介護保険制度の持続可能性の確保
(1)介護給付の重点化・効率化
(2)世代間・世代内の負担の公平性の観点に立った制度の見直し
を謳っています。それぞれについて簡単に要約すると、
(1)介護サービス提供体制の充実では、
今後、単身・夫婦のみ世帯の増加、都市部での急速な高齢化が予想され、一方、介護が必要となった場合に、自宅で介護を受けたいという希望を持つ人は約4人に3人にのぼることから、介護が必要になっても、また入院しても早急に退院し、できる限り自宅での生活が継続できる体制づくりが必要であるとして、地域包括ケアシステムの構築のため、より一層居宅サービス・居宅系サービス等提供体制の充実に向けた取組を実施するとしています。
(2)認知症対応の推進では、認知症の人が、医療・介護サービスを受けながら地域での生活を継続していくための施策の推進が重要として、平成25年度から5年間を対象とした「認知症施策進5か年計画」を作成。今後、認知症施策を早期に包括的に推進していくとしています。
(3)マンパワーの増強では、質の高いサービスを提供していく上で、介護分野の人材確保や処遇改善が必要だとして、社会保障・税の一体改革の中で必要な財源を確保し、介護職員の処遇の更なる改善に取り組むとともに、キャリアパスの確立に向けた取組を進めること等により、介護に必要な労働力を安定的に確保する必要があるとしています。また、
Ⅱ介護保険制度の持続可能性の確保では、
(1)介護給付の重点化・効率化では、要介護高齢者の在宅での生活を支える在宅サービス等の拡充は必要である一方で、高齢化による介護給付費の増加が避けられない中、介護保険制度を持続可能なものにするためには、介護給付の重点化・効率化を合わせて実施する必要があるとして、予防給付の内容・方法の見直し、介護施設の在宅への移行、自立支援型のケアマネジメントの実現に向けて制度的対応等の検討を加え、介護保険の保険給付の対象となる保健医療サービス及び福祉サービスの範囲の適正化等により介護サービスの効率化及び重点化を図るとしています。
(2)世代間・世代内の負担の公平性の観点に立った制度の見直しでは、増大する介護費用を世代間・世代内で公平に負担する観点からの制度的対応が必要だとして、介護納付金の総報酬割導入、利用者負担のあり方等を検討し、保険料水準の上昇に伴う低所得者対策の強化や、増大する介護費用の公平な負担といった観点から制度の見直しを行うとしています。

在宅サービス・居住系サービス

「介護給付の重点化・効率化」の方向性が打ち出されている以上、在宅サービスは要介護度の軽い利用者にどのように答えていくのかが問われています、しかしまた、同時に「入院しても早期に退院し、できる限り自宅での生活が継続できる体制作りが必要」とされていることから、在宅においても重度化への対応も求められているといえます。従って施設サービスが重度化にシフトすることがイコール在宅は要介護度の軽い利用者に対応することになったと考えるのは間違いだと思われます。
平成24年度施行の介護保険法改正・介護報酬改定等で、在宅サービス・居宅系サービス等の提供体制の充実に向けた取組が実施されましたが、さらにこの普及・拡充が図られると思われます。要介護者が在宅で可能な限り生活を継続する支援策が引き続き拡充されると思われ、その延長線上には、在宅サービスのあり方を改革することによって、在宅での看取りをも視野に入れた対応ができるようスキルアップを目指さなければ、結果として、事業が立ち行かなくなってくると思われます。
在宅もまた事業戦略の再検討が迫られていると言えます。

認知症対応の推進

認知症は、加齢に伴う精神疾患として、障害が発生しますが、この分野で今後5か年計画で認知症施策の推進が図られる予定です。既に厚生労働省では認知症ケアの推進では、「身体ケア」モデルから「身体ケア+認知症ケア」モデルへの転換が論じられており、今後更に認知症高齢者が増大することが確実視されている折りから、全てを施設入所で賄えないのは自明ですので、地域における介護サービス事業者が、この認知症ケアサービスにどのように関わっていくのか事業戦略が求められます。

介護給付の重点化・効率化

給付の重点化では、社会保障審議会介護保険分科会では、軽度介護者(要介護1,2)の施設サービスの給付額が在宅における支給限度額を上回っていることについて、問題提起がなされています。一方施設サービスの中重度化への対応の方向性が固まっている以上、要介護度の低いものは、介護予防に移行する可能性が高いことを視野に入れて、介護事業の戦略的再検討が必要になってきると思われます。

これからどうするか

厳しい、厳しいと嘆いていても事業の改善はありません。
介護は極論すれば、例え「介護保険制度」が崩壊しても、そのサービス自体はなくなりません。
そのためには、介護保険制度の激変に振り回させない独自の介護経営を確立する必要があります。そのためには、
月次損益ベースで必ず黒字化する。
経営的に厳しい訪問介護では、介護報酬が高い身体介護を中心にサービスができるようスキルアップを図る。
介護保険制度内のサービスでは、比較的利益率率の良い身体介護や小規模デイサービスを検討する。
保険外では多様な居住の場を追求するビジネスモデルやトラベル事業の横展開を図る・・・etc
介護保険制度だけに基づいた事業計画だけでなく、介護サービスに隣接した介護保険を使わないサービスを探求し、介護保険制度がどのように変化ししようとも自立的な経営が継続できるよう体質を強化していく努力が欠かせません。