建設業社会保険未加入問題

平成24年5月1日国土交通省から、建設業の保険未加入問題につき重要な告示が発表されました。
平成24年11月以降順次規制が厳しくなり、最終的には、平成29年度以降は社会保険未加入企業は現場に入れなくなります。
このため、業界では対応を急ぐ動きが本格化すると思われます。

告示の骨子

(1)建設業の許可申請書の添付書類の保険加入状況の追加
建設業の許可(許可の更新を含む)の申請時に、保険加入の状況を記載した書面の提出を求められます。
(2)施工体制台帳等の記載事項への保険加入状況の追加
特定建設業者が作成する施行体制台帳の記載事項及び下請負人が特定建設業者に通知すべき事項に、社会保険の加入状況が追加されます。
(3)経営事項審査における保険未加入企業への減点措置の厳格化
雇用保険、健康保険、厚生年金保険の各項目について、未加入の場合それぞれ40点の減点(3保険に未加入の場合は120点の減点)
施行は(3)は平成24年7月1日から、(1)及び(2)は平成24年11月1日からとなっています。

社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン

国土交通省では社会保険未加入問題は根深い問題と見て、建設業の下請重層関係に着目し、以下のような「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」を公表しています。
第1 趣旨
本ガイドラインは建設業における社会保険の加入について、元請企業及び下請企業がそれぞれ負うべき役割と責任を明確にするものであり、建設企業の取組の指針となるべきもである。
第2 元請企業の役割と責任(以下要約)
(1)総論
社会保険については、元請企業においても下請企業に対する指導等の取組を講じる必要がある。指導対象は、元請企業と直接の契約関係のある者に限られず、元請企業が請け負った建設工事に従事するすべての下請企業だが、直接指導せず、直接の契約関係にある下請企業に指示し、又は協力させ元請企業はこれを統括するという方法もある。
(2)協力会社組織を通じた指導等
様々な機会をとらえて協力会社に対する意識を高めることが重要であり、具体的には次の取組を実施。
(ア)協力会社の社会保険加入状況の定期的な把握
(イ)協力会社組織を通じた社会保険の周知啓発や加入勧奨
(ロ)未加入が発覚した協力会社への早期加入指導
(3)下請企業選定時の確認・指導等
下請契約に先立って、選定の候補となる建設企業について社会保険の状況を確認し、適用除外でないにもかかわらず未加入である場合には、早期に加入手続きを進めるよう指導する。
遅くとも平成29年度以降においては、社会保険の全部又は一部に適用除外ではなく未加入である建設企業を下請企業に選定しないとの取扱いをすべきである。
(4)再下請通知書を活用した確認・指導等
再下請通知書の「健康保険等の加入状況」欄により下請企業が社会保険に加入していることを確認し、未加入の企業があれば、(3)と同様の指導をする。
(5)作業員名簿を活用した確認・指導等
新規入場者の受け入れに際して、各作業員について作業員名簿の社会保険欄を確認し、未加入等が発覚した場合には、作業員名簿を作成した下請企業に対し、作業員を適切な保険に加入させるよう指導する。
遅くとも平成29年度以降においては、適切な保険の加入が確認できない作業員について、特段の理由がない限り現場入場を認めないとの取扱いをすべきである。
第3 下請企業の役割と責任
ア その雇用する労働者の社会保険加入手続きを適切に行うこと
建設労働者について、労働者である社員と請負関係にある者の二者を明確に区分した上で、労働者である社員についての保険加入手続きを適切に行うこと
労働者であるかどうかは、関連する諸要素を勘案し、総合的に判断されるべきものであるが、保険未加入対策の推進を契機に、従来の慣行が適切なものかどうか見直しを行うことが望ましい。
イ 元請企業が行う指導に協力すること
元請企業の指導が建設工事の施工に携わる全ての下請企業に行き渡るよう、元請企業による指導の足りないところを指摘、補完し、もしくはこれを分担するとともに、再下請企業の対応状況について元請企業に情報提供すること。

以上のように未加入の企業にとっては将来の死活問題に関わる内容です。十分に関係企業と連携して事に当たりましょう。