平成25年4月から希望者全員を継続雇用の対象とする必要があります。
これは規模の大小にかかわらず、すべての事業主に義務付けられています。従って、中小企業といえども例外はありません。
なお、経過措置として、平成37年3月31日までの12年間については、対象者を全員でなく、年金を受給できる年齢に到達した以降については対象者の選定に一定の基準を設けることができるようになっています。この場合には平成25年3月31日までに労使協定をしておく必要があります。
従って、4月1日を経過した現時点で労使協定を結ぶことはできません。
高年齢者の雇用を確保する措置には次の3つの方法があります。
①定年を引き上げる
②継続雇用制度を導入する。これにはふたつあります。
(1)再雇用制度
定年で一旦退職し、その後改めて雇用契約を結ぶ。一旦退職するため、労働条件を変更することが可能です。
(2)勤務延長制度
定年になった従業員を退職させず、そのまま引き続き雇用する。あくまでも引き続き雇用されているため、個別の同意がなくして、一方的に労働条件の変更をすることはできません。
③定年を廃止する。
この中では、やはり再雇用制度を導入する事業主が多いと思われます。
事業主が高年齢者雇用確保措置として継続雇用制度を導入する場合には、希望者全員を対象とするものにしなければなりませんが、改正高年齢者雇用安定法の施行されるまで(平成25年3月31日)に労使協定により継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めていた事業主については、経過措置として、老齢厚生年金の報酬比例部分の支給開始年齢以上の年齢の者について継続雇用制度の対象者を限定する基準を定めることが認められています。
経過措置期間 対象年齢
平成25年4月1日~平成28年3月31日 61歳以上
平成28年4月1日~平成31年3月31日 62歳以上
平成31年4月1日~平成34年3月31日 63歳以上
平成34年4月1日~平成37年3月31日 64歳以上
例えば昭和28年4月2日生まれの男子は61歳から報酬比例部分の年金が支給されます。そのため、本人が継続雇用を希望すれば年金が支給される61歳までは企業は原則として雇用する必要がありますが、61歳以降については労使協定による選定基準を満たす者に限定することができるようになります。
選定基準を設ける場合は、平成25年3月31日までに労使協定を締結しておく必要があります。
従って、現時点で新たに協定を結んでも無効となります。
上述した経過措置のほか、心身の故障のため業務に堪えられないと認められること、勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと等就業規則に定める解雇事由又は退職事由(年齢に係るものを除く)に該当する場合には、継続雇用しないことができます。
厚生労働省のホームページに掲載中の継続雇用制度に関するQ&Aの内、興味深いところを要約します。
Q 当分の間、60歳に達する労働者がいない場合でも継続雇用制度を導入しなければならないのですか。
A 高年齢者雇用安定法の趣旨から、当分の間60歳以上の労働者が生じない企業であっても、65歳までの定年の引き上げ、雇用継続制度の導入等の措置を講じなければなりません。
Q 継続雇用制度を導入していなければ、60歳定年による退職は無効となるのですか。
A 定年を理由として60歳で退職させたとしても、それが直ちに無効となるものではないと考えられますが、適切な継続雇用制度の導入がなされていない事実を把握した場合には、高年齢者雇用安定法違反となりますので、公共職業安定所を通じて実態を調査し、必要に応じて、助言、指導、勧告、企業名の公表を行うことになります。
Q 継続雇用制度について、1年ごとに雇用契約を更新する形態でもいいのでしょうか。
A 1年ごとに雇用契約を更新する形態については、高年齢者雇用安定法の趣旨にかんがみれば、年齢を理由として65歳前に雇用を終了させるような制度は適当でないと考えられます。
したがって、この場合は、
①65歳を下回る上限年齢が設定されていないこと
②65歳までは原則として契約が更新されること(但し、能力など年齢以外を理由として契約を更新しないことは認められます)が必要であると考えられますが、個別の事情に応じて具体的に判断されることになります。
Q 例えば55歳の時点で、
①従前と同等の労働条件で60歳定年で退職
②55歳以降の労働条件を変更した上で、65歳まで継続して働き続ける
のいずれかを労働者本人の自由意思により選択するという制度を導入した場合、継続雇用制度を導入したということでよいでしょうか。
A 高年齢者が希望すれば、65歳まで安定した雇用が確保される仕組みであれば、継続雇用制度を導入していると解釈されるので差し支えありません。
Q 本人と事業主の間で賃金と労働条件の合意ができず、継続雇用を拒否した場合も違反になるのですか。
A 高年齢者雇用安定法が求めているのは、継続雇用制度の導入であって、事業主に定年退職者の希望に合致した労働条件での雇用を義務付けるものではなく、事業主の合理的な裁量の範囲の条件を提示していれば、労働者と事業主との間で労働条件等について合意が得られず、結果的に労働者が継続雇用されることを拒否したとしても、高年齢者雇用安定法違反となるものではありません。
Q 当社の就業規則では、これまで、基準に該当する者を60歳の定年後に継続雇用する旨を定めていますが、経過措置により基準を利用する場合でも就業規則を変えなければいけませんか。
A 改正高年齢者雇用安定法では、経過措置として、継続雇用制度の対象者を限定する基準を年金支給開始年齢以上の者について定めることが認められています。したがって、60歳の者は基準を利用する対象とされておらず、基準の対象年齢は3年毎に1歳ずつ引き上げられますので、基準の対象年齢を明確にするため、就業規則の変更が必要になります。
(モデル就業規則は厚生労働省のホーメページをご覧下さい)
Q 経過措置により継続雇用制度の対象者に係る基準を労使協定で定めた場合は、労働基準監督署に届け出る必要はありますか。
A 常時10人以上の労働者を使用する使用者が、継続雇用制度の対象者に係る基準を労使協定で定めた場合には、就業規則の絶対的必要記載事項である「退職に関する事項」に該当することになります。
このため、労働基準法89条に定めるところにより、労使協定により基準を策定した旨を就業規則に定め、就業規則の変更を管轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
また、継続雇用制度の対象者に係る基準を定めた労使協定そのものは、労働基準監督署に届け出る必要はありません。
Q 年金の支給開始年齢の引き上げスケジュールは男女で異なっています(女性は5年遅れ)。経過措置の対象年齢も男女で異なることになるのでしょうか。
A 経過措置の対象年齢については男女で異なるものではなく、同一となっています。
なお、男女別の定年を定めることや継続雇用制度の対象を男性のみとすることなど、労働者が女性であることを理由として男性と異なる取扱いをすることは、男女雇用均等法において禁止されています。
もっと詳しくお知りになりたい方は、厚生労働省のホームページをご覧下さい。