相続対策(今日)

今はやりの相続対策を今回は取り上げたいと思います。
相続対策は即節税対策ではありません。相続対策は節税対策を含めた総合的な対策です。
ただ、節税対策に限定すれば、極論すれば、金を物に変え、その評価差額を利用して相続税を圧縮することと定義づけできるでしょうか。

法人化というスキーム

相続対策(昨日)でご紹介したように、不動産管理会社というスキームは何となく腰が引け、法人化というスキームが巷でささやかれています。
これなら絶対に否認されないと豪語する向きもあるようですが、同族会社の行為計算の否認という規定がある以上、絶対に安全とまでは言い切れないかも知れません。
もっとも行為計算の否認の規定は伝家の宝刀で、抜くぞ抜くぞといってなかなか抜かないので、大丈夫かなとも思います。
ただ、節税対策は納税者と当局のイタチごっこの面もありますので、未来永劫安全といったものではありません。
なお、法人化がトレンドになった背景には、最近の国の各税目に対する姿勢をうまく利用してやろうという下心もあります。
同族会社にそんなことはほとんどありないと思いますが、国際競争力を付けるには法人税率の引き下げが必須だなどと経団連などが唱え、特に安部政権になってからはその傾向が強くなっています。
一方所得税は増税傾向です。それならいっそう税率の差を利用して、法人化で節税しようという思惑も間違いなくあるように思います。
1.法人が個人の賃貸建物を買う
もっとも単純なパターンです。このスキームは不動産管理会社方式だと管理の実態が問われ、最悪否認される場合もあるので、いっそう法人に個人が持つ賃貸用建物を売却してしまい、法人が賃貸業を行うという法形式を整えて当局の否認を避けようというスキームです。このとき何故建物だけかというと、土地まで買うお金を法人で調達するのが、大変だからといった程度のものです。
なお、このとき法人の株主は子供にしておきます。
当然法人が個人から不動産を買う以上、その分のお金を用意しなければなりません。
また譲渡する個人も不動産を売却すれば、お金が入ってきますので、それをほっぽっておくと相続財産が増えてしまうので、その対策も考えておかなければなりません。
なお、この時の不動産の譲渡価額ですが、譲渡所得が出ないように未償却残高で売却するのが一般的です。
ただ注意しなければいけないのは、土地は売らず、建物だけを売るので、何もしなければ借地権が発生してしまうので、認定課税を避けるため、無償返還届を出し忘れないようにする必要があります。
2.法人に賃貸建物を現物出資する
このスキームは法人にお金を用意させるのは大変なこと並びに建物を株の形式にして株価評価の仕組みを利用して、評価を下げようというものです。
現物出資というのは、簡単に言ってしまえば、普通はお金を出資するところを、物を出資するものです。
現物出資も結局は個人から法人に所有権を移すことになりますので、現物出資した個人は譲渡したと同じになり、譲渡所得が発生します。
なお、出資者は当然親でしょうから、株主は親になります。従ってどこかで、子に贈与なりして株主を変えておいた方が節税上有利でしょう。
このスキームのうまみは、例えば時価1億円の賃貸建物を現物出資して、その対価としてその法人から株をもらうと、その貰った個人の相続発生時の相続財産は、建物ではなく株価として評価することとなります。
株価評価は建物は固定資産税評価額ですし、更に賃貸ということで、出資額1億円がざっくり3,500万円位になり、相当な額の圧縮ができます。
また、株は建物と違い登記料がかからず、数株ずつを贈与することもできますし、また株価が下がったときをみはからって贈与することが出来ます。
まあ、贈与を絡めた相続対策でもあります。

タワーマンションというスキーム

最近タワーマンションを使った節税というのもはやっています。オリンピックが東京に来ることが決まったため、臨海地域に高層マンションが開発され、このスキームがますます流行るような気がします。
最近のニュースでも高層マンションの最上階が即日完売となった。購入者には医者や弁護士などが多いなどといっておりました。税理士でないのが残念ですが・・・。
このスキームは高層マンションそれも最上階かそれに近いところを買うという簡単なスキームです。
これも金を物に変えることによって評価額を圧縮するものです。
このとき重要なのが最上階かそれに近い階というのがミソです。
マンションの場合上の階にいけばいくほど高くなっていきます。一階が5,000万円の物件なら、最上階は同じ面積でも1億は下りません。でも面積が同じなら相続税評価額は全く同じ金額です。なんか変なのですが、今の評価基準ではそうなってしまいます。
そこを突く節税対策です。

プロパテイーマネジメント

あまり聞き慣れない言葉かもしれませんが、最近相続の分野でも聞くようになってきました。
どんな場面でこれが出てくるかというと、例えば被相続人が都心部に一棟ビルをもっていて、それ以外めぼしいものがないとします。
このとき、相続財産の分割をどうするか、また、納税資金をどう工面するかという問題に直面します。
こうした難問を解決する手段として、ビルを区分所有に分割して相続したり、一部を売却して納税資金に充てなければなりません。この時に出てくるのが、プロパテイーマネジメントです。
区分所有にして、売却したり、管理するとなると、町の不動産屋さんでは、ちょっと手に余ります、そこで登場するのが、このプロパテーマネジメントを業とする会社です。
従って、これは節税対策ではなく、広義の相続対策です。
別な項にも書きましたが、相続は1に分割、2に納税、3,4なくて5に節税です。なによりもまず、円滑に分割相続することが何より重要です。

小規模宅地の評価減

相続税の世界では、小規模宅地の特例を過不足なく使うのが至上命題ですが、実は最近の相続事情からなかなか使いづらい局面があります。
ある本で読んだのですが、最近の相続では、相続人の平均年齢が何と60代半ばだというのです。被相続人ではなく、相続人です。
そうなると、自宅を相続する場合既に相続人に自宅があるため、いわゆる特定居住用宅地の評価減が使えないという局面も増えてくる可能性があります。
そのためかどうかはわかりませんが、若い人の間で、マイホームを持たず賃貸用の収益物件を先に買うという動きも出てきているようです。
これなんかは正に究極の相続対策でしょうか。
相続対策(今日)はこの位にして、次回は相続対策(明日)を書こうと思っています。