相続対策(昨日)

今回から相続対策の来し方行く末を思い、何らかの参考になればと、相続対策を昨日・今日・明日と3つに分けて掲載します。
この昨日、今日、明日は単なる区切りで、昨日だからといって、もう使われないスキームと言っている訳ではなく、相続対策としては今も使われる伝統的手法で、相続対策にも、流行がある位に考えて頂いた方が良いかと思います。

土地の有効活用

昨日の対策などと言うとお叱りを受けるかも知れません。むしろ老舗的対策と言った方が良いかも知れません。
土地の有効活用は2つのことを狙っています。
1つは土地を賃貸等にすることにより、土地の評価を落とすこと、もう1つは土地を有効活用することにより、土地に働かせて金を稼ぐことです。
1つ目の土地評価を落とすことというのは、自用地であれば路線価評価のままなのを、これを賃貸に回すことにより、借地権や借家権分だけ土地の評価が落ちることを狙うものです。
このときよく借金をするとそれが債務控除となり、節税対策になるなどといわれますが、それは嘘です。
借金するのは、その土地の上に例えばアパートを建てるとき、自己資金がないか、手元に金はあるが不安だから借金をするだけのことで、それ自身が節税対策になることはなく、これはあくまで土地の評価が落ちることを狙った節税スキームです。
え!そうなの、と思う方のために簡単に解説すると、あなたが5,000万円と土地を持っていたとします。その5,000万円でアパートを建てた場合、5,000万円の現金は建物に変わり、建物は固定資産税評価額で評価し、更に賃貸していることにより、恐らく評価額は2,500万円程度になります。つまり2,500万円の節税です。
これを手元現金がなくなるのがいやだから、5,000万円借金をしてアパートを建てたとします。そうすると、今の財産は、現金5,000万円、借金5,000万円、建物2,500万円、結局、合計2,500円です。
なお、土地は借金しようとしまいと、貸家建付地として同額だけ、評価を下げることができます。
従って無理に借金を増やすなどということは、全くの愚の骨頂です。
借金を増やしたために、とうに相続税の負担はないのに、借金の返済に行き詰まり破綻などという笑えない話は実は案外あるものです。
2つ目の土地を働かせて金を稼ぐは、勿論賃料稼ぎですが、やりようによっては、これを相続税の納税資金にする方法もあります。
ここで、このスキームでの注意点を上げておきたいと思います。
そもそもこのスキームは自分からというより、ハウスメーカーからの話というケースが圧倒的だろうと思います。
業者からの提案だから怪しいという訳ではありません。むしろうまく行っているケースが当然多いと思いますが、このケースで起こりうる問題を掲げておきたいと思います。
1.節税計画が資金計画より優先されている。
節税のため、例えばアパートを建てるとして、これを借入でやると、恐らく返済期間は30年~35年程度になると思いますが、その間常に満室という訳はなく、当然ながらだんだん古くなりますので、賃料も確実に下がっていきます。
この他にも10年もすれば、水回りや、屋根、防水等かなり多額の修繕も見込まねばなりません。そこらのリスクもすべて織り込んだ計画になっているか要注意です。
それよりもなにより、立地に問題は十分考える必要があります。これから人口減の時代に突入します。駅から遠いようなものは、早晩見向きもされない時代が来ると思っていた方が安全です。
2.家賃一括保証に安心していないか。
20年、30年の長期で一括借り上げるのを売りにする業者がいます。でもこれは決して新築当初の家賃でずっと借り上げてくれる訳ではありません。
大抵は2~3年に1回のペースで家賃の見直し要求がきます。概ね15年程度経過すると2割程度の減額があると考えておいた方がよいと思います。
それと、家賃保証を行うため、「共済金制度」なるものを設定せれます。この共済金が物件が古くなると上昇していきます。ここらを踏まえた返済計画でないと、節税破綻が待っています。

不動産管理会社

ひと頃はやった、そして今もこのスキームの会社が圧倒的だと思いますが、不動産所得がかなりある場合、不動産管理会社を設立し、そこに管理料を払い、不動産所得を圧縮すると同時に、その管理料を法人の収入源として、例えば子供達に役員報酬を払うというスキームです。
不動産を所有する個人の所得税を圧縮しながら、その分を推定相続人に所得移転し、将来の相続税の納税資金にもなるということで、資産家の方であれば、かなりの割合でお持ちではないでしょうか。
これ自体非常に優れたスキームではありますが、余りにはやりすぎたためか、あるいは過度に管理料を設定し、節税を通り越して脱税に近いところまでいってしまったためか、平成18年国税不服審判書の裁決があって以来、何となくこのスキームを推進することに納税者乃至税理士側の腰が引けてしまい、法人化という新しいスキームに移りつつあのかなといったところでしょうか。
ちなみに、審判所で何が問題になったかというと、管理料を貰っているのに、実際は外部の管理業者に管理をまかせきりにしており、その同族の不動産管理会社は管理らしいことを何もやっていないということで、設定されている管理料の全額が否認されたというものでした。
でも逆にいえば、管理料に見合う管理業務を本当に行っていれば、必ずしも否認されるものではないと思われます。
従って、本当に自分で清掃業務や賃借人の世話など実際にやっていることを証明できるよう常日頃心がける必要があります。
但し、かって課税側は不動産収入の20%までは管理料とすることを黙認していたようですが、今は難しいと思われます。
そこで登場してきたのが法人化というスキームです。
これについては、相続対策(今日)の中で取り上げてみたいと思います。

その他

その他の伝統的な相続対策としては、養子縁組、贈与などがありますが、それはまた別の機会に取り上げてみたいと思います。