小規模介護事業

世の中の役に立ちたい、第二の人生はやりがいのあることをしたいとお思いなら小規模介護事業の起業は如何ですか。
但し、この事業で儲けようなどと考えるのは止めた方が良いと思います。
昔はそんな時期もあったようですが、今ではそんなに甘くはありません。
それでもなぜ介護事業かといえば、介護保険制度がどのようになろうと介護という行為がなくなることはあり得なし、今後ますます社会が必要とするビジネスだからです。

小規模デイサービス

介護保険の対象者の絞り込みは今後とも避けては通れない課題です。それでも小規模デイサービスを事業の中核に据え、これの横展開を図るというのが、現実的ではないでしょうか。
デイサービスなら、定員10人以下での設置が無難です。10人を超えると看護士の設置が必須となります。その場合それなりの人件費負担を覚悟しなければなりません。
また、1つの施設で定員を増やすより、小規模施設を複数持つ方がベターな気がします。
いろいろ問題が出たとき、施設間で調整することも可能だからです。

デイサービスの収支

1人でできる仕事ではないので、事業を始めるにはスタッフを用意しておかなければなりません。
また、法人でないと通所介護事業者の指定を受けることができません。
指定は都や県に指定申請しなければなりません。
一緒に事業をやってくれるヘルパーさんや調理スタッフ、それに利用者を紹介して頂けそうなケアマネージャーに声をかけることからスタートでしょう。
もちろん地域でのクチコミも重要です。
収入は介護報酬で決められています。サービスの提供時間と介護度によって介護報酬が決まります。介護度の高い人を受け入れれば、報酬も高くなりますが、当然高いスキルも要求されます。
収入の目安は、8,000円×日×定員×0.8×稼働日数/月といったところでしょうか。
支出はなんといってもまず人件費です。
小さな施設でも、管理者、生活相談員、介護士が必要です。この中に調理ができる人がいなければ、調理スタッフも必要でしょう。
スタッフの数は国の基準では、利用者5人に1人以上ですが、介護度の高い利用者が多ければ、これでは手が回らないと思われます。
支出に占める車両関係費も相当のものとなります。10人定員でも最低2台のワンボックスカー等は必要でしょう。
また、施設が賃貸であれば、家賃も必要となります。

介護事業の横展開

今後介護報酬だけで、小規模介護事業を維持・発展させていくのは、かなり厳しくなるのではないかと思われます。
逆転の発想をすれば、介護報酬だけに頼らなければ、工夫によって介護事業を発展させることもできます。正に創意工夫による経営です。
というより、事業はもともと創意工夫によって発展させていくものです。
また、介護事業はコミュニテイービジネスです。地域に密着し、責任を持つことは介護事業経営者の責務です。
地域社会の中での役割を考え、高齢者のニーズをくみ取っていくことが大切です。
お買い物への付き添い、観劇への同伴、話し相手、旅行の同伴など、介護保険外の事業展開も介護事業安定のため取り組むべき課題です。

介護タクシー

介護事業の横展開を考えるにあたり、介護タクシーへの参入も考えられます。
介護タクシーは介護保険の適用となる通院などを主な目的とするものと、介護保険外で、自由に外出や買い物をしたいといったニーズに応えるものとがあります。
介護タクシーとは、高齢者・身体障害者の方を対象とした完全予約制の移動サービスをいいます。対象者が限定されている点と流しができないという点で通常のタクシー事業と異なります。
一般的なタクシー事業は、保有台数や運行管理などの厳しい条件がありますので、相応の資金の準備がないと開業できませんが、介護タクシーは介護用車両(セダンやハッチバックでも可)と第2種運転免許(セダンの場合はヘルパーの資格が必要)があれば開業可能であるため、非常に開業しやすい介護サービスであると言えます。
介護タクシー事業者となるためには、管轄運輸局に「一般旅客自動車運送事業経営認可申請」と「運賃認可申請」を行う必要があります。
デイサービスなどで、送迎用の車両があれば、それを使えます。
利用者を核とした旅行クラブを介護タクシーで企画するのも経営的にとても良いと思います。
何より大きな施設に入居するとただ最後の時を待つみたいなところがありますが、小規模介護事業者ならではの生き甲斐創出と言えます。

高齢者住宅

高齢者向けアパートの運営も人口構成からは避けて通れない課題です。一般にアパートのオーナーとしては、特に孤独死への危惧から余り積極的ではないと考えられます。
逆に言えばその部分を安否確認体制を築けばクリアできそうです。
但し、「老人を入居させ、入浴、排泄若しくは食事の介護、食事の提供又は洗濯、掃除等家事又は健康管理」(介護等といいます)をすると有料老人ホームに該当し、届出が必要になります。
外出支援、安否確認、緊急時の対応、相談の取り次ぎなどは介護等には含まれないようです。
なお、アパートは必ずしも自分で保有する必要はなく、築年数の古くなった空室に悩むオーナーから一括借り上げ形式で、又はどうしても1階は空きやすいので、その部分を借りて運用するという方法もあります。

どのような事業も工夫次第

制度の改正や報酬の引き下げを恐れていても始まりません。現状の介護保険の財政状況を考えれば、かってのような甘い考えで施設を運用することはどんどん難しくなるものと思われます。
発想を変えれば、介護事業もごく普通の事業になったということではないでしょうか。
どの事業だって漫然と経営していれば、会社30年説ではありませんが、いずれ淘汰されます。
事業は時代適応業といわれています。その時代にあったものを提供しなければ、どの事業だっていずれ没落していきます。
また介護事業は一旦始めたら簡単に撤退などできません。利用者に迷惑を掛けることは極力避けなければならないからです。