令和7年7月14日
税理士 柴田 幸男
Q. 相続時精算課税制度の対象は60歳以上の者から18歳以上の子・孫への贈与となっていますが、相続時精算課税制度のしくみはどのようになっているのでしょうか?
親や祖父母の世代はたくさんの金融資産や不動産を所有しています。相続より早い時期に子や孫等にその財産を移転すれば、その子たちは資産を有効に活用して、幸せで豊かな暮らしを送れるのではないでしょうか。また、事業継承についても、生前に円滑に事業の移転を図ることができます。
さらに、後に問題を起こしそうな子には生前贈与をして遺留分を放棄させる等、後継者の憂いをなくしておくこともよいでしょう。
次世代への資産移転の時期の選択に対して従来からの法制度でも可能な相続税と贈与税の一体化措置が「相続時精算課税制度」です。
相続時精算課税制度とは満60歳以上の父母又は祖父母からの満18歳以上(いずれものその年の1月1日現在の年齢)の直系卑属である推定相続人(代襲相続人も含まれ、養子でもOK)及び、孫に対する贈与について暦年課税との受贈者の選択によって適用が認められる制度です。相続人でない孫への贈与であっても2,500万円までは無税、これを超える部分については一律20%の税率のよ贈与税で済むという制度です。
贈与を受けた人は暦年課税により贈与税申告を行うか、相続時精算課税制度を適用して贈与税申告を行うかを選択します。
精算課税制度を選択した場合には、その他の財産と区分して贈与者ごとに贈与財産の価額を合計して計算した贈与税の申告を行い納税します。贈与された時に支払う贈与税の計算方法は2,500万円の特別控除枠があり、2,500万円を超えた部分に対して20%の贈与税を払います。
相続が発生した時に、その贈与を受けた財産の贈与時の課税価額と相続した財産とを合計した価額をもとに相続税額を計算します。
つまり、精算課税制度を選択した人は贈与者の相続時にそれまでの贈与財産の課税価額を集計し、相続財産とあわせて相続税額を計算するのです。そうして計算した相続税額から二重課税とならぬように支払った贈与税相当額があれば還付を受けることができます。
いってみれば、相続の時に贈与税と相続税との間の精算を行うというしくみです。
養子縁組の解消や、素行不良による欠格等により推定相続人にならなくなった場合、すでに精算課税制度の適用を受けていた人たちの取り扱いはどうなるのでしょう。精算課税制度を選択する届出を提出した人は、贈与者の推定相続人でなくなった場合であっても、その贈与者からの贈与により取得した財産については、その後も精算課税制度の適用を受けることになりますので、ご注意ください。
〇相続税・贈与税についてのご相談は、柴田税務会計事務所 柴田までお尋ねください。