名古屋市東区の税理士法人柴田税務会計事務所税理士会計士会計事務所をお探しなら

           

贈与の証拠を確実にする方法

令和7年11月9日

税理士 柴田 幸男

Q.せっかく贈与しても相続の時に認められずに、結局相続税がかかることもあるそうですが、どのようにすれば贈与を確実に立証できるでしょうか

Point
 贈与は片務諾成契約で、税務上の成立には証拠が重要である。

A1.贈与の証拠の残し方

 財産を生前贈与する時は、「贈与の立証」をしておくことが大切です。

 生前贈与が有利といっても、贈与した事実を確定させなければ意味がありません。金融資産の贈与などは特に証拠を残す必要があるでしょう。

 例えば、次の手順を踏んで客観的な証拠づくりをし、税務上のトラブルが生じないようにしておきます。

  1. 贈与する人の銀行口座から贈与する現金を引き出し、もらう人の口座へ毎年あげたい時に振り込む。
  2. もらう人は自己名義の口座を作っておく(開設申し込みは、必ず本人又は親権者の自署押印であること)。
  3. もらった人、又はその親権者が、通帳、印鑑、証書などを保管する。届け出の印鑑は贈与者のものとは別にし、受贈者の他の金融取引にも使用する。
  4. 110万円を超える時には、必ず贈与税の申告をする。
  5. 贈与をする際には贈与契約書を作成し、確実性を高めたい時には確定日付をとっておく。

 なお、金銭贈与については毎年「111万円」ずつ贈与し、「1,000円」の贈与税の申告しておくことが贈与事実の証明方法であるという人がいます。確かに、111万円にたいする贈与の立証証拠になることは確かでしょう。

 しかし、贈与額がいくらであろうが、上記の手続を踏んでおかなければならないという点は同じです。つまり、111万円の贈与で贈与税の申告をしており、受贈者名義の預金に移し替えていたとしても、実際の運用・管理を受贈者がしていない場合には、贈与とは認められないこともあります。逆にいえば110万円以下の贈与で贈与税の申告をしなくても、きちん上記の手順さえ踏んでおけば生前贈与が否認されることはないのです。

A2.贈与の立証は名義の変更

 贈与は口頭でも書面でもできますが、税務上はものの引渡しが重要です。所有権の移転登記、又は登記の目的となる不動産や株式の贈与がいつあったかについては、一般的にその登記や登録のあった日により判定することになります。名義の変更をせず、まして、払うべき贈与税を払っていないような場合には、税務上、贈与が認められていないケースが大半です。

 確実に贈与の立証をするためにも、不動産をもらったら登記すること、株式をもらったら名義の書き換えをすること等が重要なポイントとなるでしょう。

A3.実質的には誰が管理・運用しているのかが重要

 預金や有価証券の名義が変わっていたとしても、その資産の源泉が被相続人のものであり、生前において被相続人が実質的に管理・運用していた場合には、被相続人の名義借り財産であり相続財産の範囲であるとして相続税が課税されています。贈与したならば、贈与した人が口出しすることなく、もらった人が自由に処分できるようにしておくことも贈与を立証することになるのです。

〇相続税・贈与税についてのご相談は、柴田税務会計事務所 柴田までお尋ねください。