令和6年10月1日
税理士 小野 貴裕
業務上、事故が発生したり契約が当初の予定にない理由で解約となった場合などで、損害賠償金(や違約金)が発生することがあります。ここではその際にやり取りされる損害賠償金の消費税の取扱いを見ていきます。
こちらの通達では「心身又は資産につきくわえられた損害の発生に伴い受けるものは、資産の譲渡等の対価に該当しない」とされており、基本的に消費税は不課税取引となります。
一方で次の場合には課税取引となります。これは損害賠償金という名目での支払いであっても、消費税法の要件(国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡、貸付、役務の提供)に該当する取引と同じに扱えるという意味です。
1.損害を受けた棚卸資産等が賠償金の支払いとともに加害者に引き渡され、軽微な修理によって加害者が使用できるとき。
実質的に棚卸資産の購入となります。
2.特許権などの無体財産権の侵害を受けた際に権利者が受け取る損害賠償金。
実質的に無体財産権の使用料となります。
3.事務所の明け渡しが遅れた場合に賃貸人が受け取る損害賠償金。
実質的に家賃となります。
損害賠償金の支払いは上に見た通り、例外の場合でなければ不課税となります。一方でその賠償金に消費税を乗せて請求してもよいかという疑問が残ります。
そもそも損害賠償金はどう決まるのでしょうか。日本損害保険協会のホームページの説明によれば、①損害額の積み上げ、②過失割合の考慮、③双方の示談による合意により確定するとされています。損害額も過失割合も評価の問題であり、結局は加害者と被害者との合意があるかどうかの問題となります。
なので損害額100万円に対して消費税額10万円を乗せて請求して、加害者がそれを支払うのならそれは損害賠償金として合意があったことになるので乗せてよいということになります。ただし10万円は消費税額としてではなく、損害賠償金の一部となります。
また税務上の処理としては上の通達に従い、110万円が不課税取引となります。
〇詳しくは、柴田税務会計事務所 小野迄お尋ねください