令和6年12月2日
税理士 小野 貴裕
法人の設立に際し登記が必要なのに対して、個人事業では登記は特に求められていません。しかし、商号の登記をしておくことでメリットを受けられる場合があります。ここではあまり耳慣れない商号登記の制度を見ていきます。
商号が登記してあるということで、株式会社などと同様に事業の社会的な信用が高められます。また法人の商号と同様に、同じ住所で同じ商号が使われた場合に差止請求ができることとなります。将来法人成を予定している個人事業主が、商号のみ先に登記しておくという使い方も考えられます。
また事業用の銀行預金口座を作る際に、商号登記の屋号のみで口座名義として口座を作れる銀行があります。個人事業の預金口座は通常個人名を入れる必要がありますが、これを省略できるのです。さしあたり三井住友銀行、ゆうちょ銀行などでできるようですが、実際に作る際には銀行への確認が必要です。
登記の手間と登録免許税の費用負担が発生することです。商号登記には、代表者の氏名や営業所の住所も登録しますが、これらの情報が変わる場合には都度変更登記を行う必要があります。
適格請求書の発行事業者は税務署に登録する必要がありますが、個人事業主の場合は本名の記載が必要となります。ペンネーム等で活動しているフリーランスの方から要望が多く、現在では「別に屋号の表示もできる」ということになっています。本名の表示が省略できるわけではなく、いまだに抵抗の声はあります。
現在の対応策としては「適格請求書発行事業者の登録を受けない」又は「媒介者交付特例」を受けるということが言われていますが、将来的に「登記済みの屋号であれば本名の表示は省略できる」という改正が予想されます。この改正があれば、商号登記の制度は広く使われることになると思われます。